好きなヒト
第13章 再生2
つぎの日もマナトが気になって事務所へ行った。
「マナト。おい、マナト。聞いてるのか。」
「え、ああ。すみません。なんですか。」
「だから、今度の週末の予定空けとけよ。遠出すっから。」
「え・・・遠出?」
「ああ、おまえここにいたら藤原さんのことで頭いっぱいだろ。だから出掛けるぞ。」
「大丈夫ですよ。そんな気つかってもらわなくても。もう終わったことです。」
「おまえのその動揺のしようをみてて大丈夫とはおもわねぇよ。」
「すみません。やっぱ動揺してますよね、俺。」
「無理もないけど、でも今さらどうにかなるもんでもないだろ。」
「・・・藤村さんが、藤原さんが俺の事をすごく心配してたって。ずっと口止めされてたから言わなかったけど、いつ会っても俺のことを心配してるって・・・だから元気な姿を見せてやったらって。」
あの野郎・・・余計なことを・・・。
「・・・会いたいのか。」
「わかりません・・・どうしたらいいのか、わかりません。」
マナトはそう言うけれど、会いたいと顔に書いてある。
俺は自分がすでに藤原さんに会ったことを言うべきか迷った。ここで、俺がおせっかいをしたことをここで謝るべきなのかもしれない。
でも、そしたらマナトはまた藤原さんの存在に縛られてしまう。結婚したことを知ったら、またボロボロになってしまうのではないだろうか。
やっぱり、会わすべきじゃない。
マナトが苦しむ姿はみたくない。
藤原さんがいない分、俺がいてやる。だからごめん、マナト。
「会うべきじゃない。俺はもうあんなマナトは見たくない。会ってもまた傷付くだけだ。」
「ユズルさん・・・。」
それでも、マナトは会わないとは言わない。
藤原さんに言ったように、絶対に会うなと約束させたくなったけれど、出過ぎたまねだ。
「帰るわ。」
「え・・・。」
「おまえがどうしてるか見に来ただけだし、バイトあるから。」
バイトまではまだ時間があった。けれど、マナトを見ていたくなかった。
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