好きなヒト
第12章 再生1
なんにせよ調査停止になった以上これ以上動けないよな。
それに、なんとなく俺が足を踏み入れる界隈じゃない気がする。
でも、みたことない制服だったな。ちょっと気になるけれど・・・。
俺は事務所でそんなことを考えながら、テーブルに課題を広げていた。
赤点を取った代償。
藤原さんのことがあってテストどころじゃなかった。
試験はぼろぼろ。
山のような課題をこなさなければならない。
担任には呼びだされるし、補講には出なきゃなんないし。
ユズルさんが入ってきた。
シェイクを飲んでる。
“飲めっ。”ともう一方の手に持っていたのを俺の前にドンっと置く。
「はあ、ありがとうございます。」
「停止だってな。」
「はい。」
「なんだろうな。急に。」
「そうですね。」
話そうか迷ったけれど、騒ぎになるとまずいので何も知らないフリをする。
「ま、いいけど。進んでなかったし。」
「はい。」
「なにしてんの?宿題?」
「補講課題です。」
「ああ、赤点の?」
「はい。」
「大変だねえ。」
「ひとごとですね。」
「うん、ひとごとだもん。」
「マナト、ライブって今週だよな。」
「はい。」
「何着てったらいいの?」
「え?」
「ヘビメタパンクなカッコとか?」
俺がそんなバンドをやっているようにみえるのか・・・。
「そうですね。そうしてください。」
「おまえそんなこと言ってると、俺マジでモヒカンで行くぞ。」
「ぜひ見たいです。」
「普通でいいよな。制服でもいい?」
「いや、制服はちょっと、時間も遅くなると面倒なんで。」
「ああ、そっか。」
「俺出番終わったらフロアに降りてユズルさん探すんで、待っててください。」
「了解。」
ユズルさんは報告書を打ち込み始めた。
俺はその間に課題を進める。
あれこれ冗談をいいながら時間が流れる。
藤原さんといた時は、藤原さん一色だったけど、こういうのもいいな。
ユズルさんはいい人だ。
タカヤさん、見る目ないな。まあ、タカヤさんは男に興味ないしな。
俺も、藤原さん以外の男には興味ないけど。
男同士っていうのはいろいろ問題がある。
思春期の気の迷いってやつだ。
これでよかったのかもしれない。
そう自分に言い聞かせた。
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