好きなヒト
好きなヒト
成人向完結
発行者:iroha
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/09/09
最終更新日:---

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好きなヒト 第10章 迷う心3
「マナト・・・」
「タカヤさんがふざけただけです。俺のことどうとか、そういうことはありません。」
「わかってるって、離せ」
「ユズルさんの好きな人ってタカヤさんだったんですね。誰にも言いません。ずっと辛かったんですね。」
ユズルさんが息を呑む。
「お前、何言って・・・。」
俺は抱きしめた腕に力を込める。
ユズルさんは抵抗するのをやめた。

俺の肩に顔をうずめて、鼻をすする。


携帯の振動が伝わる。
俺の携帯も、ユズルさんの携帯も。でも、俺たちは出ようとしなかった。

俺も泣きたいくらいの不安に襲われていた。
けれど、泣いてしまったら俺の予感が的中してしまいそうで、恐くて泣けなかった。


ユズルさんを抱きしめながら、頭に焼き付いた藤原さんの顔が胸を締め付ける。
苦しい。

「ありがとう。」
ユズルさんはしばらく泣くと、顔を上げた。

手で涙を拭う。
目が真っ赤だ。

「すみません、ハンカチとか持ってなくて。」
俺は笑って見せる。

「ああ、大丈夫。これでお前に涙まで拭われたら、俺、立つ瀬がないよ。」
ユズルさんも照れくさそうに笑う。

二人でベンチに座る。

「ごめんな、びっくりしたろ。」
「はい、まあ、それなりに。」
「笑ってすましゃよかったのに・・・できなかった。」

それから少し話をして、俺たちは事務所へは戻らずに家へ帰った。

その日俺の携帯には何度か藤原さんからの着信があった。
けれど、どうしも出ることができなかった。

最終的にメールがきた。
それを確認することさえ恐ろしかったけれど、覚悟を決めてメールを開く。


“マナト、すまない。どうか、元気で。”

予感は的中。
頭の中が真っ白になった。

涙さえ、出ない。

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