好きなヒト
第9章 迷う心2
「って、感じです。私、こっちのエリア回るので、マナトさんこっちお願いします。」
「うん、了解。じゃあ、さっそく行く?」
「ハイ。」
「じゃあ、ユズルさん。あと頼みます。」
マナトがにこっと笑う。
ふうん、後輩といるとこいつも先輩に見えるな。
「お願いします。」
リホが頭を下げる。
「あいよ~。がんばって~。」
俺は手を上げて二人を見送る。
う~ん、暇だぁ。
受験だからってマナトが入ってくれたんなら受験勉強でもすっかな。
俺は鞄から課題を取りだす。
進路、どうしよう。
大方は決めているし、志望校も出してはある。
いまのところC判定。
滑り止めはどうしような。
そう何校も受けれる訳じゃないし。
違う。俺が悩んでるのは進学のことじゃない。
わかってるのに、また自分を誤魔化そうとしてしまう。
いやな癖だ。
考えなきゃいけないのは、ここを続けるかどうか。
タカヤに返事をしないと・・・。
タカヤはきっと俺が続けると言えば俺に話したいことがあるのだろう。
会えなくなるのは辛い。でも、いまの状況が続くのだって辛い。
いいな、マナトは。幸せそうに顔をほころばせて。俺には一生手に入らない。
一生。
俺はこれからどうやって生きて行くんだろう。
これから進学して、就職して・・・そのうち結婚とかして子供が出来て・・・。
きっとそうやって生きて行くんだ。
そうしたら、タカヤのことはいずれ忘れられる。
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