好きなヒト
第7章 繋がり5
「そんなことはありませんよ。」
俺は適当に答える。
「そうか。」
タカヤさんもそれ以上は聴いてこない。俺が話す気がないのを察したのだろう。
「マナト、明日はどうする?」
「俺は、今日気になった子を見つけたので、その子を探しにN高付近へ行くつもりです。」
「そうか、なら俺も行こうかな。」
「一緒にですか。」
「だめ?」
タカヤさんは上眼使いでかわいく言う。
「タカヤさんにかわいく言われても、俺は喜びませんけど、いいですよ。タカヤさんいると女の子も喜んでいろいろ話してくれそうだし。」
「はは、そういうのは俺よかユズルだろ。」
「ユズルさんもですけど、タカヤさんもですよ。」
「俺あんな薄情じゃねぇよ。」
「薄情?ですか?ユズルさんが?」
「ああ、俺なら自分のこと好きだっていってくれる人間には応えるけどな。」
そういうことか。
「それって、来るもの拒まずの理論でしょ。」
それのがよっぽど薄情だよ。
「そういうつもりはないんだけどな、誰かが捕まえておいてくれたら・・・って、あれ、なにそれ。」
「え。」
「手」
俺は自分の手を見る。
「爪。」
「ああ、ネイルです。」
昨日の今日なので爪はそのまま。
「そういう趣味があるんだ。」
「趣味っていうか、まあ、お洒落ですかね。」
「へえ、見せて。」
俺はタカヤさんに手を差し出す。
「自分で?」
「まさか、人にやってもらったんですよ。」
「すごいな。」
「はい。」
タカヤさんは俺の爪をまじまじと見る。
「なんか、あれだな。お前はよくわからんな。」
どういう意味だ。
俺は言葉の意味がわからず、タカヤさんをみる。
「お前がここに来て結構経つけど、どういうやつなのか、掴めない。謎が多い。」
「そうですか?」
「ああ。」
ということは、
「他のメンバーのことは掴めてるってことですか?」
「え。」
タカヤさんは、少し考える。
「いや、全然。」
俺は思わず笑ってしまった。
「なんですか、それは。」
「よくわからん。でも、そういうイメージだ。わかりそうでわからん。一見単純そうに見えて、実はそうじゃない。人当たりがいいくせに、壁がある。」
37