好きなヒト
好きなヒト
成人向完結
発行者:iroha
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/09/09
最終更新日:---

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好きなヒト 第6章 繋がり4
電車で4駅移動。
駅の西口を出る。東口と違いこちらは人通りも少なく、ひっそりとしている。
オフィス街の外れの方にガラス張りの巨大なビルが見える。大手アパレルメーカーの自社ビルだ。建物にでかでかとメーカーのロゴが書いてある。
そこを目指して歩く。 俺が用があるのはそこではないけれど、その近くなので言い目印になる。
建物大きいので、近そうに見えるがそうでもない。
歩くこと20分。小ぶりのテナントビルや貸しビル、アパートや事務所が建ち並ぶ一角。
煉瓦っぽい外壁の古臭いビルの4階にその店はある。

各階1店舗ずつ、2階と3階にも同じような店が入っているが、店内の様子はあまり見えない、窓やドアにブランド名と営業時間が書いてあり、洋服やカバンが並んでいるのでそれと解る程度だ。1階は何かの事務所の様だ。小売店ではなさそうだ。

 今回は表から入る。黒いドアを開けて中に入る。外のイメージと違い中は明るく、シンプルで洗練された空間だ。奥のカウンターに人がいる。ブランド物のYシャツやジャケットがきれいに並んでいて、テクノの様な感じの静かな音楽が流れている。レジカウンターの黒いスーツを着た女性の前に立つ。
 
 俺を見てにこと笑う。営業スマイル。如何にもこういうところにいそうな雰囲気のある、落ち着いた感じの大人の女性だ。髪をきれいにアップにしている。耳元にシャネルの大きなピアスが光る。

「いらっしゃい。」
俺だとわかってんのかな。

「どーも。」
俺はサングラスを下へずらして挨拶する。

「あれ?」
マリさんは俺を覗きこむ。
俺はポケットから2枚チケットを出して差し出す。

「今日時間あったら、来てくれませんか。」
マリさんはそれを手に取る。

「あー、歌うんだー、あれ、バンド変わったの。」
うれしそうな声を上げる。

「いや、ゲストっす、もともと俺はピンですから。」
「そうなの?でも前はずっとあのバンドで歌ってなかったっけ。」
「ボーカルが見つかるまでってことで、仮だったんで。」
「そうなんだー。どうしようかな、店早めに閉めちゃおうかな。」
マリさんはうーん、と考えている。

「でも、珍しいね。私のとこへくるなんて。」
マリさんが顔を上げる。

「さっきアツキさんとこ行ったんです。マリさんの話が出たんで。」
俺は左手を見せる。

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