好きなヒト
第6章 繋がり4
マニアックな電気部品店。
ネイルサロン。
インポートのブランド免税店。
まずは、ネイルサロンから。
繁華街の入口にある小さなテナントビルの2階にある。
個室式のネイルサロンで、昼間は一般の、夜は主に夜のお仕事関係の方を客にしてる。
一応はまっとうなお店なんだが。
表からは入らない。
裏の従業員用の通用口のドアから入る。
入ってすぐエレベータがあるが、二階なので階段を使う。
ドアの横の数字パネルをを押す。
なぜか、俺はここの解錠コードを知っている。
ここはドアを空けると従業員の休憩室になってる。
その奥が事務所になっていて、閉店時には休憩室と事務所の間にもセキュリティが掛かる。だから、休憩室の入口の解錠コードだけ特別に教えて貰った。
ノックしてドアを空ける。
入ると、知らない女の人がこっちを見てる。
「こんにちは。」
挨拶する。
「こんにちは。」
女の人は挨拶を返してくれるけれど、明らかに不信そう。
まあ、そうだよな。
「あの。アツキさんって、いま忙しいっすかね。マナトって言ってもらえば分かるんで。」
ちょっとスカした感じに話す。
ああ、ちょっと待ってね、とお姉さんが席を立つ。
すぐにアツキさんが来た。
アツキさんは男の人だけどネイリストで、ここの稼ぎ頭の24歳。
元々はホストをしてたらしいけど、身体を壊してこっちへ転職。
「おー、マナト、久しぶりだな。元気にしてたか。」
アツキさんが言う。
「ご無沙汰です。アツキさん今忙しいっすか。」
俺は窺うように言う。
「あー、いまから1件入ってんだ。三十分くらい待っててくれたら終わるけど。」
アツキさんが渋い顔をする。
「マジっすか。全っ然、大丈夫です。」
俺は答える。
「じゃあ、ここで待ってな。適当にくつろいでろ。しばちゃん、こいつマナト。俺の知り合いだからここで待たしてやって。」
俺と、しばちゃんと呼ばれた休憩室にいた女の人にそう言って、アツキさんは表へ戻っていった。
それから、そのしばちゃんと話したりして、結局50分くらい待っていたが、時間はすぐに過ぎた。さすが話しが上手い。
アツキさんに呼ばれて個室に案内される。
テーブルを挟んで向かい合わせに座って、俺は左手を差し出す。
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