好きなヒト
第1章 はじまり
ガチャ。
ドアが開く音。
「あれ、マナト?」
俺は机に突っ伏して一人悶々としていた頭を声のしたほうに向ける。
うぃーっすと返事をする。
「なに、具合でも悪い?」
「いや、なんでもないっす」
「ァ、悩み事?」
あ、図星。
この人けっこう鋭いとこあるんだよな。
「いや、ダレてるだけなんで」
「じゃあ、これ食うか?」
ユズルさんがオレの前にピンクの紙袋を置く。
オレは体を起こして、紙袋を見る。
「なんですか、これ」
「さぁ?開けてみ」
オレは紙袋の中を覗く。キレイにラッピングされたお菓子が入っている。手作りっぽい。
「あの、これプレゼント?」
「そ、オレがマナトの為に作ったー」
棒読み。
「…いやいや、また女の子に貰ったんでしょ、食べてあげなくていいんですか」
「マナト食べなよ」
ユズルさんはモデルみたいにスタイルがよくてちょっと中性的な美形。
掴みどころのない雰囲気で女の子に人気がある。
俺の1つ年上で、高3。
しょっちゅうプレゼントだなんだを貰っている。
食べ物はユズルさんの周りの誰かの腹に入る。ごめんね、作った女の子。ユズルさんも摘んだりはするが大切に食べるといった感じではない。
ちょうど小腹が減っていたので、遠慮なく包みを開ける。
中身はクッキーだ。
おっ、うまい。サクサク。
「うまいっすよ、ユズルさん」
「どれ」
ユズルさんも食べる。
「うん、美味いね」
にこっと笑う。
「ユズルさん相変わらずモテますねー」
「いやぁ」
「付き合ったりしないんですか?」
「んー?」
ユズルさんはモテる割に、女気がない。彼女がいるという話も聞いたことがない。
「なにマナト、オレに興味あんの?」
さらっと聞き返してくる。
ねぇよ、男に興味なんか。
ァ…、いや、あった…
あぁ…
一人で撃沈。
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