好きなヒト
第8章 迷う心1
マナトの助っ人に行ってるタカヤの代わりに、調査入り。
海賊版のゲームソフトの追跡調査。
ちょっともっさめの格好をしてマニアックなゲームソフト店を回る。
この前マナトが変装してるのをみてたまには身を入れてやってみることにした。
タカヤが上げてた調査結果をもとに回る。
調査入りして数日、成果なし。
一旦警察が足を運んでるんだそう簡単に目ぼしいものは見つからないだろう。
これはしばらく通う羽目になるかな。
タカヤのやつ、マナトの案件の方がおもしろそうだ。
いや、おもしろがるためにこれをやってるわけじゃないけれど。
海賊版が出回ったゲームというのは販売数事態が少なく、一部のマニア層に高値で取引されるRPGもの。
俺もゲームはするけれど、スポーツや格闘ものばかりだし、そこまでハマりはしない。
ゲーム店を見て回ってもたいして面白くない。
でも、一応資料に上がってた店は回っとかないと。
店内を適当に見て回る。
ウィンドウの外を行く人の影にあいつの姿がダブる。
たった一度のキス。
あれで、全部持って行かれた。
俺の心、全部。
あいつはきっとそんなことがあったことさえ忘れてるんだろうな。
俺も時間がたてば忘れるだろうと、一時期の気の迷いだろうと思って自分を誤魔化していた。
けれど、想いは日々募ってどうにもならなくなって、忘れようとか、諦めようとかそういうことをするのを諦めた。
なんで、こんな、苦しいんだ。
今まで何人かと付き合ってきた。結構マジに恋愛をしたことだってある。でも、こんな風に身を焦がしたことは、ない。
身を焦がすような恋って、あるんだなっと実感した。
叶わないからだ、きっと。手に入らないと解っているから、渇望する。
店の外を行き交う人達が小走りになる。
窓ガラスにポツポツと雨粒の跡がつき始める。
あの日も雨が降ってた。
いきなり夕立に見舞われて、びしょ濡れになって大慌てで事務所へ駆け込んだ。
43