夜想倶楽部 鉄哉編
夜想倶楽部 鉄哉編
成人向完結
発行者:とりさん
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/03
最終更新日:---

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夜想倶楽部 鉄哉編 第2章 第一章 絶望の始まり
(食いもんばっかりに換えたんじゃ消えてなくなっちまうばかりだ。チョロ太に……)
 シャツかズボンを買ってやろうと、鉄哉は市場をぶらついて、古着を並べた露店で、適当なサイズを見繕った。無論大きめを選ぶ。だぶだぶの服を着たチョロ太を思い浮かべ、鉄哉はちょっと一人、笑みを浮かべた。

 買ったズボンを仲間の少年の一人に預けた。直接渡すのが気恥ずかしかったからだ。
 一人になった鉄哉は、ちゃんと金を出して買ったリンゴを、うまそうにかじる。

 そのとき、鉄哉の肩を背後から乱暴につかむ者があった。鉄哉は瞬間に身構えて、その手を逃れようとする。その彼の行く手をさえぎって正面に現れたのは、小野寺というやくざ者だった。後ろにも二人、配下の若いちんぴらがいる。
 小野寺は一皮目の表情に乏しい男で、逞しくはないが上背は大きかった。地肌にさらしを巻き、背広の上着だけを引っかけている。さらしの横腹のあたりに短ドスを差しているが、無論知らないものには見えないようにしている。
「久しぶりだな、小僧」
 低く抑揚に乏しいいつもの声だ。腕組みして不気味に微笑む(彼の微笑みはいつも不気味だった)小野寺に、鉄哉はつっかかった。
「何だよう、てめえら! 俺はあんたらに何も迷惑かけてねえぜ」
 鉄哉はつかまれた肩を振りほどこうとするが、背後の男はますます万力のように力をこめて離さなかった。小野寺は口元に笑みを浮かべ、暴れる鉄哉を眺めている。
「慌てんなよ。今日はおめえの仕事に因縁をつけに来たわけじゃねえんだ」
 鉄哉はなおも反抗的な視線で小野寺をにらみつける。
「その手を離せよ!」
「離してやんな」
 小野寺は部下にあごで合図する。
 男の手から解放された鉄哉は前のめりに、小野寺にぶつかりそうになった。
「儲け話を持ってきてやったんだぜ。ちょっとお前に頼みたいことがあってな」
「何だよ。儲け話って」
「詳しいことはここでは話せねえ。ただ、おめえにしかできねえ仕事なんだ。ちょっと顔貸してくれねえか」
「けっ、誰が。あいにく俺は今、わりと懐あったかいんだ」
「取りあえず手付けに五百円払うぜ」
「…………」
 もちろん、鉄哉はここで考える。
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