夜想倶楽部 鉄哉編
第2章 第一章 絶望の始まり
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絶滅収容所の独房のように、暗く無機質で何もない部屋に、鉄哉は横たわっていた。意識が戻ってから多少の抵抗は試みたが、当面、あきらめた。体力の無駄遣いは最大の敵だ。野生動物のように、体力を温存し精神を研ぎ澄ませ、機会を待つ。それが本能だった。
神谷仁助は洋館のきしむ階段を上り、薄暗い廊下を進むと、教えられた部屋の扉のノブに手をかけた。秘められた楽しみの始まりである。扉を開くとすぐに、少年の言葉にならないうめき声が漏れ聞こえてくる。神谷はそっとほくそ笑んで、部屋の中に足を踏み入れた。
猿ぐつわを噛まされ、両手は後ろに回され、がんじがらめに縛られている。神谷が部屋に入ってきたのを知ると、激しく声をあげようとするが、猿ぐつわの奥から漏れる声は言葉にならず、弱々しい。入ってきた男が、自分の味方でないことぐらいはすぐにわかる。だが鉄哉には、これから自分の身に起こることなど、想像できるはずもなかった。
「お前が今日の私の獲物か」
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NIGHT
LOUNGE5060