夜想倶楽部 鉄哉編
夜想倶楽部 鉄哉編
成人向完結
発行者:とりさん
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/03
最終更新日:---

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夜想倶楽部 鉄哉編 第9章 第八章 侵入者
 真冬が近い。月の明るい晩だった。郊外の夜想館周辺には雪が積もっていた。夜想館自体は平地にあるが、山沿いなのだ。雪は積もりやすい。

 多くの少年たちは独房で暖をとる手段もなく、毛布にくるまって寒さに震えていることだろう。鉄哉は比較的平気だった。野ざらしの路上生活で寒さには慣らされている。

 深夜。鉄哉はハッと目を覚ました。足音が聞こえる。かすかな、ひたひたとした、存在を隠そうとするこそこそとした足音が。もはや経験的に鉄哉は知っていた。今日は木曜日。やくざ連中の個人的な調教はともかく、客は取らない日と決まっているはずだ。一体誰だろう?

 足音は何度も止まって、またひたひたと続く。そして、鉄哉が見つめる鉄扉の窓に、二つの小さな汚れた手が伸びてきて、鉄格子をつかんだ。鉄哉は息を飲んだ。
 懸垂をするように、二つの手に力が入り、肘が上がり、鉄格子越しに小さな顔がのぞいた。

「チョロ太!」

 チョロ太は汚れた顔に満面の笑みを浮かべた。
「兄キ、やっぱり生きてたね! 俺信じてたよう」
「ど、どうやってここに……」
 鉄哉は思わず大きな声を出しかけ、語尾の音量をフェードアウトさせた。
「兄キがいなくなってから、俺、必死で探したんだ。そしたら最後に兄キが会った人ってのが、あの小野寺ってヘビみたいなこわいおっさんらしいってわかった。俺、あいつが街に出てきたのを見かけて、後をつけて、車のトランクに隠れたんだ。そしたらここに着いた」
 さすがの鉄哉も言葉が出なかった。あまりに無謀だったが、彼の気持ちに胸が熱くなった。
「俺さ、兄キに買ってもらったズボン穿いてるよ今も。それでここに……」
 いったん顔が引っ込んで、鉄格子を持つ手が一本になった。そしてあらためて現れた手には、新しいズボンのポケットから出したらしい、幾重にも折った古びれた紙切れが握られていた。
 鉄哉はそれを受け取って開いた。その時紙切れの中から、ぽろっと、小さなものが床に落ち、外に向け開く小さな鉄格子の窓から差し込む月光を受けてきらりと光った。鉄哉は反射的にそれを素足で踏みつけ、紙の方を見た。拡げるとかなり大きかった。それはこの夜想館の見取り図らしかった。

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