夜想倶楽部 鉄哉編
第7章 第六章 少年と少年
「だんだん慣れてきたら、気持ちのいいこともあるんだ。菊池さんは最初怖かったけど、僕ががんばったら、最近は優しいし、お客さんも優しい人いるし」
鉄哉は、何だか太郎がたまらなく愛おしくなった。自分とは全く種類の違う人間だ。健気で、そして弱そうに見えて、本当は芯に強いものを持っている。鉄哉とはまったく別の種類の強さだ。
「ねえ、もうちょっとくっついてもいい?」
太郎が鉄哉の方を向いて言った。
「変なことするなよ」
「しないよ」
今度は太郎が笑った。太郎はからだを横にして、鉄哉の肩にくっつき、腕を鉄哉の胸に添えた。手のひらの温かさを感じる。淫らな獣のようでもあった、さっきの姿が嘘のようだ。素直で健気で正直な、何の罪もない善良な少年。鉄哉は胸に説明不能の疼きを感じて、腰の所の、太郎の手をそっと握った。柔らかい指が、握り返してきた。
やがて、やすらかな寝息が聞こえてきた。鉄哉もいつになくリラックスしていた。二人のからだを覆うように毛布をかぶり、目を閉じた。
この少年を、太郎を連れて、もう一度自由になりたい。ここを逃げ出したい。例えどんなに絶望的な状況であっても、鉄哉は太郎のように、全てをあきらめて状況に流されることなどできなかった。
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NIGHT
LOUNGE5060