夜想倶楽部 鉄哉編
夜想倶楽部 鉄哉編
成人向完結
発行者:とりさん
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/09/03
最終更新日:---

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夜想倶楽部 鉄哉編 第1章 序章 鉄哉とチョロ太
「下ろすぜ」
「兄キごめん……」
 鉄哉はボロ切れのような小さな少年を脇から下ろした。鉄哉を兄キと呼んだ少年は、体格からはせいぜい七、八歳にしか見えない。元々は綿のランニングシャツと国民服を縫い直した短いズボンだったらしいものを穿いているが、両方佃煮のように色づいて原型をとどめていない。鉄哉の小脇から下ろされて、泣きべそをかきながら彼を追うのだった。
 鉄哉は小路を迷わず折れて折れて、背後を数度確かめると、やっと汗を拭いて歩みを遅くした。
 鉄哉は先に述べた通り、この汚れた少年に比べればかなり大きく、外見からは十二歳前後と思われる。精悍で痩せた体格をしていた。先ほどまで野獣じみていた目つきは、今はいささか穏やかに変化している。
「謝るくらいなら勝手なことすんな……」
 鉄哉はボロ切れのような少年の頭をはたくが、言葉は穏やかだった。
「みんなバカにするから……」
「チビなんだからしょうがないだろ。気にすんな」
 チビという言葉に涙にうるんだ目がちょっときつくなる。
「チビじゃねえ。みんなの世話にだけなって食ってくなんて、俺いやなんだ」
 鉄哉はふっと優しい息を吐く。
「いいんだよその気持ちがあれば。いずれお前が俺くらいになったら、そんときまた誰かチビの面倒見てやればいいだろ?」
「……う……ん……」

 鉄哉は戦後の混乱さめやらぬ中、新宿駅の近郊でスリ、カッパライを生業(なりわい)として生きる少年だった。もともと両親の顔も知らない彼だったが、孤児院では餓死者と病死者が相継いでおり、年かさの者の暴力もひどかった。鉄哉は孤児院を脱走し、空と土をゆりかごに殺伐とした戦後を生き抜いていた。
 似たり寄ったりの境遇の少年たちと時に争い、時につるむ中で、彼を慕い、ほとんど常に行動を共にする少年達もできていた。この小さな少年、通称「チョロ太」もその一人だった。

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