ダークセル
第20章 Ⅲ en - 1
丈太郎も成長していた。やはり身長は猛雄より高く、体重は同じくらいだった。猛雄がずんぐりとした典型的な柔道体型だとすれば、それよりはスリムな、ある意味黄金比率的、彫刻的な肉体をしていた。白い顔は、相変わらず端正だったが、女性的な雰囲気は微塵もなかった。
試合場で向かい合うと、丈太郎は少し笑顔を見せて、すぐに厳しい表情になった。猛雄は終始、かたい表情をしていた。
両者頭を下げ、審判の試合開始。試合時間は六分。
中学までは、猛雄は丈太郎に一度も勝ったことはない。
俊敏さとパワーにおいては猛雄が勝り、技術と柔軟性においては丈太郎に分があった。両者積極的に技をかけあうが、猛雄は有効を二回とられ、四分以上が経過していた。立ち技中心の、力感とスピードのある、白熱した試合となり、会場は盛りあがっていた。
観客席には、同じ高校の同輩先輩後輩の他、あのT高校の柔道部部長も、応援に駆けつけて声援を送っていた。
五分四十五秒。猛雄は捨て身の勝負をかけ、丈太郎の懐に飛び込んで腕を取り、投げを打った。丈太郎のからだが回転し、背中から地に落ちた。猛雄の一本勝ちだ。
汗をだらだらと流し、真っ赤な顔をしたまま、丈太郎の手を取り、彼を起こした猛雄だったが、表情は茫然としていた。会場の声援や拍手が聞こえてくるまで、数分間も間があったような気がしたが、それは一瞬だったようだ。同じように汗びっしょりの丈太郎の顔がすぐそばにあった。丈太郎と猛雄は固く握手を交わし、試合場を去った。
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NIGHT
LOUNGE5060