ダークセル
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成人向完結
発行者:とりさん
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/08/29
最終更新日:---

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ダークセル 第19章 Ⅱ darkcell - 14
「素晴らしい肉体と、歳のわりには強い力と、若さを持っている。それらはもちろん価値がある……しかし、お前はまだ何者でもない。お前に何か人に自慢できるものがあるとすれば、何や」
「柔道、です」
 猛雄はほとんど迷わず答えた。九条は指先をさらに猛雄に寄せた。
「それや。それがお前に一番向いた、ごっつい看板を背負える道やとわしらは考えておるんや」
 猛雄には九条が何を言いたいのか、あるいはしたいのか、まだわからない。
「今お前は親父の元に帰ることを嫌がっておったみたいやが、その心配は全くない。ヤツはお前を、たった二十万で売りよったわい。今戸籍上、お前はわしの養子や。九条猛雄なんや」
 あまりの情けない父の有り様は、さすがに猛雄を呆れさせたが、捨てられた、あるいは売られた悲しみなど微塵もなかった。
「お前はある場所に、わしが借りたアパートに住む。家賃と生活費はわしが出す。多くは出さんから、まあ小遣いはバイトでもして稼げ」
 それは猛雄には、夢のような話だった。
「そして呼び出しがあれば、いつでもどこにでも出向いて、わしらや、顧客の相手をする。奴隷として、全身全霊で奉仕するんや。それもまた、お前の価値を高める」
 猛雄はうなずいた。
「高校は、変わってもらう。スポーツさえできればパッパラパーでも行ける私立高校や。お前にピッタリやろ。柔道もかなり強い。団体で県代表も夢ではない。わしの知人が働きかければ、転入に問題はない。そこでお前は勝ち残るべく、これも全力を尽くす」
 猛雄はまた強く頷いた。
「夢はでっかくオリンピック金メダリストや。そうなればわしらの一連の仕事としては、大成功や。お前もでかい看板を得て、オンリーワンの『何者か』になれる」

 金メダルはちょっと遠すぎる、と思った。だがこれまでの力だけを(しかも暴力が本質の力を)追い求めてきた自分とは違った、皮肉にも陽の当たる道が、落ちるところまで落ちたと思われた自分に、拓けてきたのだ。『何者か』になりたいと、猛雄は強く思った。

 手枷足枷、リングピアスは外された。
「このぐらいのピアスホールはな、すぐに塞がる。痕跡も残らんやろ」
 そう言われて猛雄は安心した。左手小指には新しい柔らかい爪が、生えそろっていた。
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