ダークセル
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成人向完結
発行者:とりさん
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/08/29
最終更新日:---

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ダークセル 第2章 Ⅰ memories - 1
 三年生のとき、同級生に非常にからだが大きく、腕っ節の強い少年がいた。野々宮丈太郎という名で、その腕力に似合わず、整った愛らしい顔立ちで、優しく物静かな少年だった。勉強もよくできた。家も裕福で、三年生ですでに自分の部屋を持っているという。だがそういうことを鼻にかけたりするタイプではなく、子ども達の間でも男女を問わず人気があった。猛雄は丈太郎に憧れた。彼は週に三度、道場に通って柔道を習っているという。

「猛(たけ)ちゃん、興味があるなら見学に来ないかい?」
 丈太郎の言葉に、猛雄は内心小躍りしたいほど喜んだ。でもぼそぼそと聞き返した。
「……いいの?」
「僕と一緒に行けばすぐOKだよ。柔道、猛ちゃんなら僕よりも強くなれるかもしれないよ」
「まさか」
 その頃猛雄は身長は平均より低く、貧弱なからだをしていた。給食以外の食事がろくなものではなかったから、仕方がない。
「肩幅が広いし、足も大きいだろ。からだ大きくなるよ。猛ちゃんみたいなからだつきを、骨太っていうんだ。柔道に向いてると思うよ」
 そんなことを言われて、大柄な丈太郎に両肩を抱かれると、照れくさいような不思議な気持ちになって、猛雄は赤面した。

 道場で、倒されても倒されても、指導者の大人に向かっていく丈太郎を見ていると、幼い猛雄は、自分では正体を理解できないうずきのようなものを感じた。

 帰宅して父親に、思い切って道場に通いたいと頼んだ。父親には酔いかたがいいときと悪いときがある。すでにそういう顔色をうかがって、事前に危険を察したりする能力を、猛雄は身につけていた。

 男の子の父親にはいろいろなタイプがいる。

 自分自身が社会的な成功者である場合、あるいは医者に、あるいは大企業のエリートサラリーマンにと、自分の足跡を継ぐような期待をするタイプ。
 一方自分が中卒で安月給の3K労働者だからと、進学校に通わせて一流大学に行かせたいとか、自分自身の失った夢を仮託するタイプだ。

 猛雄の父はどちらかというと後者だった。息子がボクサーになりたいとか、格闘技をやりたいと言えば、喜ぶタイプだったのだ。自分の負け犬人生を、心の奥底にひた隠しにしながら、「男は強くなくちゃいかん」などと言うのである。

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