ダークセル
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成人向完結
発行者:とりさん
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ジャンル:その他

公開開始日:2011/08/29
最終更新日:---

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ダークセル 第2章 Ⅰ memories - 1
 下田猛雄(たけお)が生まれたのは、昭和四十四年のことである。

 猛雄の母親は、猛雄が小学校に上がる直前に、小さなアパートから姿を消し、二度と戻ってこなかった。原因は、夫の暴力によるものだ、と猛雄は解釈している。姿を消す前から、幼い猛雄を盾にしてでも狂ったような夫の暴力から逃れようとしてきた母親に、特別な感慨はない。
 ただ、幼い頃はわからなかったが、猛雄の父は元々がヒモのような男だったようだ。

 だから母親が消えると、猛雄の家の生活は荒れた。

 猛雄への贖罪のつもりだったのか、新しいランドセルや学用品を、猛雄の母親は残していった。だが荒れた父親は、それらをアパートの二階の窓から、全部投げ捨ててしまった。
 雨の中、泣きながら泥にまみれたランドセルや鉛筆や定規や下敷きなどを拾い集め、みじめな気持ちで、猛雄は小学校の入学式を迎えた。

 母親からの収入は途絶えても、父親は働こうとはしなかった。生活保護を受けているということは、小学校の高学年くらいになって、おぼろげに理解した。

 父親の暴力の矛先は、いなくなった母親から猛雄に標的を変えた。いつも酔っていて、ささいな行儀の悪さなどに因縁をつけ、殴り、真冬に下着一つで家の外に放り出した。
 一度など南部鉄の重い灰皿を投げつけられ、額から流血し、近所の交番に逃げ込んだことがあった。だが警官は笑って、厳しく叱られた悪ガキとしか扱ってくれなかった。

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