果てしなく長い物語
第1章 果てしなく長い物語 一章 幼少編
「おいおい、ちょっと酷くないか?」
「何が?」
「君はこの映画を根底に植え付けようというのか?」
「う~ん、まあそういう形になるかな」
「この子が白いと言っていた事は何となくだけど分かった。君が細工をしてワザと白く見えないようにしてはいるけどね」
「ははは、なかなか鋭いね」
「ふん、心にもない事を。しかし一体どういう風の吹き回しだい」
「風はおまえの専門分野だろうが」
「話の腰を折るな。私が聞きたいのはこの子をどうしようというのだって事だ」
「おかしな事を言うな? 前に俺の好きにすればいいさなんて言っていなかったか?」
「うるさい! 早く目的を言え」
「そう怒るなよ。簡単に言えば、この子は稀に見る白さなんだ。それは分かるだろう?」
「ああ、君が黒く隠しているつもりでも、まだ白い部分が時たま見え隠れするぐらいだからな」
「そうなんだよ。でもなかなか黒にはならねえ」
「この子を完全な黒にでもしたいというのか?」
「いやいや、白くしたいよ」
「じゃあ何故? 今だって充分過ぎるぐらい白いじゃないか」
「まだまだ…。真の白さを持たなきゃ意味がない」
「白さに真なんてあるのか?」
「ああ、どんな黒にも混ざらないぐらいまっさらな白だ」
「君らしい考えだが、もうちょっと計画的にやったらどうなんだい?」
「いいんだって。こういうのは行き当たりバッタリでやるからこそ面白いんだ」
「いい加減な…。その辺の感覚は私には理解致しかねる」
「まあその内どうなっていくか、それはおまえさんだって楽しみだろう」
「それは否定しない。君の決めた事だ。勝手にするがいいさ」
「もちろんそうするよ。じゃあ気晴らしに雷でも降らせてくるか。その前に大きな風を吹かせてくれよ」
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