連立の命(れんりのいのち)
第13章 《第13章》 最終章
マイラが静かに雅治に近づいた。そして、優しく彼の頭を撫でた。雅治は、マイラの顔をじっと見て、安心したように話し始めた。
「何時も母は、僕が苦しむとこう言いました。『雅治、ごめんなさい。ごめんなさい』小さかった僕は、自分が苦しい事より、大好きな母から、こう言われる方がいつも苦しかった……」
雅治は、どこからどのように話せばよいのか、分からなくなってきた。
「僕が17歳になった時、ドナーが見つかったという知らせが来ました。信じられませんでした。それが今回の事件の始まりでした」
そこで、報道陣からの質問が入った。
「雅治、生きた人間の心臓を移植されたと分かった時、どう思いましたか?」
雅治や、そこに居た全ての人が、その質問に言葉を失った。残酷な質問だった。雅治は、両方の手を、ぎゅっと握った。
マイラは、雅治の背中を撫でながら、後ろから小さな声で話しかけた。
「雅治。落ち着いて。パックスは、あなたの気持ちを、あなたの胸の中で聞いている。いつもパックスに、あなたは語りかけて生きてきたのでしょう。それを話しなさい」
雅治は、頷き、話し始めた。
「僕が、違法な移植を受けた事実は、夢の中でパックス、つまり僕のドナーから知らされました」
報道陣たちは、騒ぎ出した。雅治は、続けた。
「でも、そこに僕がたどり着くまでには、相当時間がかかった。移植後、激しい拒絶反応の中、僕は生死をさまよいました。身体がパンパンに張れ、指も曲げる事が出来ず、呼吸も上手く出来ない状態でした。移植前は、それでもじっとしていれば、ベッドの上で楽だった。こんなはずじゃなかったと、僕は移植した事を後悔しました。母は、きっと、僕が死んだら悲しいから、こんなに苦しい思いをしてでも生きて居て欲しいと思っているだけだと……」
雅治は、モニターの報道陣をしっかり見ながら続けた。
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