俺様王子の恋愛街道
第4章 第三章、俺様王子と光の君
「おはよう、メイヴィット殿」
「うむ、お早う。何の話をしておったのじゃ? 妾も混ぜてくれ」
「朝食の席でゆっくりと伺いたいことがある。良いかな?」
この際、トールの表情は見ないことにする。容易く想像できるからだ。腹が立つので、ウォーレンは脳裏に浮かんだトールの微笑みを消した。
「勿論じゃ。殿方の着替えに妾がいては悪い。先に参っておるぞ」
音を立てずに歩くメイヴィットの後ろ姿をウォーレンは見送った。
地面は相変わらず粉雪が積もったように白く、ふわふわしていた。ウォーレンは白い塊を掬ってみる。仄かにヒンヤリとした感触があるが、スタッピアの雪のように、手のひらの上で溶けたりしない。
太い枝のアーケードを抜けると、ひらけた大広間に出た。そよ風が耳を掠って、音が鳴った。ウォーレンは立ち止まって、目を瞑り、大きく伸びをした。
爽やかな朝の空気が心地よい。太陽はまだ昇り始め。空気は冷えて、夏の軍服には肌寒い程だ。思えば、フィーリーの入り口まで、山道を長い距離歩いて登ったのだ。ウォーレンはトールを振り返る。トールは黙って頷いてくれた。トールの肌は、いつにも増して白い。氷のように。
「ウォーレン様、早くお座りになって。アタシお腹ぺこぺこなのよお」
既に席についているシーニィの声に、ウォーレンははっと我に返りテーブルに歩み寄る。
「お待たせして申し訳ない」
「全くだ」
今日もロキーナは不機嫌そうだった。ウォーレンとトールがテーブルにつくと、料理が運ばれてくる。皿だけが。
ウォーレンは運ばれてくる光景に圧倒された。料理の載った大皿だけが宙に浮いて、動いている?
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