コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
第15章 使者
瞳を輝かせて出迎えるアンドレスに、マルセラもつられるように瞳を輝かせた。
「アンドレス様、ご心配おかけいたしました!」
アンドレスは深い安堵の面持ちで、改めて彼女の無事な姿に幾度も嬉しそうに頷き、微笑み返す。
「よかった!!
よく無事に戻ってくれたね、マルセラ!
本当によかった!!」
それから、彼はロレンソにも視線を向け、敬意を宿した目で見つめた。
そして、感極まった声音で言う。
「ロレンソ、こうしてマルセラが俺たちの元に無傷で戻ってきてくれたのも、君がいてくれたおかげだよ。
何と礼を言っていいものか…!!」
「いや…」と、ロレンソは相手の視線を軽くいなして、「わたしは本当に何もしていない。全て、マルセラ殿が一人でなさったことなのだ」と、誠意溢れる口調で応える。
そんな朋友に、アンドレスは輝くような笑顔を返しながら、「そんなことはあるまい。きっと、マルセラにとっては、君の存在がどれほど心強かったか知れないよ」と言って、「そうだろう?」とマルセラにも視線を投げた。
マルセラは、アンドレスの言葉通りに、少々はにかみながら頷いた。
しかし、思い出したように、すぐに苦しげな表情に変わって言う。
「でも、司祭様のご返答は、全く私たちの願っていたものとは違いました。
それを私にはどうすることもできなかった。
それが、とても、とても口惜しい…!!」
唇をギュッと結んで視線を地面に落とすマルセラを勇気づけるように、アンドレスが言う。
「マルセラ、そんなふうに気を落とすことなんかないんだ。
さあ、顔を上げてくれ。
そもそも、あの司祭は、キリスト教という名の仮面をつけて民衆の前に立ってはいるが、本心では民のことなんて、まるで考えてなどいない。
自分の地位と名望と私利私欲を守ることに必死なんだ…!」
296