魔怪探偵『ユート』
第1章 第一章:始まり
【トンネル・線路下】
間もなく最終列車となる頃の回送列車がガタガタと地面を揺らし、唯が今通っているトンネルを響かせる。
中の電灯は幾つか壊れ、マトモな灯はトンネルの先にある電柱の防犯灯のみだ。
唯「うわうっさ・・・やっぱ電車が近くだと響くわ」
しかし、そんな風景を物ともせず、唯はトンネルの中を通っていた。
不気味な雰囲気を漂わせようとも、幽霊の類の話をまったく信じない彼女にとってここは単なる通り道でしかない。
まぁ、別として通り魔とかは警戒するタイプなのだ。しかも、彼女は昔柔道部に入部していた経験があり、そこいらの男では腕っ節は敵わない。
唯「お腹空いたなぁ、ご飯何作ろうかな」
帰ったら直ぐ様この腹の虫を沈めてやりたいと考える。
唯は仕送りの問題上、無駄にお金を使えないので外食など出来るはずがない。
もはや、唯の頭の中は今日の夕飯兼夜食の献立で埋まっていた。
カツン・・・カツン・・・
だが、それは突如として聞こえてくる足跡によって妨げられた。
唯「・・・?」
歩んでいた足を一時止め、後ろや周りを見渡してみる。
だが、何も見つからなかった。自分の足音による気のせいであったのだろうか。
そう考え、唯は再び足を進め始める。
カツン・・・カツン・・・
やはり気のせいではない。
もう一度当たりを見回してもやはり何もない。
しかも、足音が自分の物でないとはっきりと次はわかったのだ。
だって・・・自分の靴はスニーカーなのだから・・・・・・
だから、あんな硬質な足音を響かせられる訳がないのだ。
どこかで聞いたような種類の靴の音を唯は必死に頭の中に存在する記憶から引き出してみる。
そして、思い出す。
アレハ“ハイヒール”ノオトダ・・・・・・
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