DEAREST -another story-
第1章 未来へ…
―――――――ェ
―――――――…ルエ……シルエ
声が聞こえる。
それはとても温かく、自分を包み込んでくれるような声だ。
忘れもしない、愛しい人の声。
「………ラ…ト?」
「シルエっ!!…よかった…。」
自分を抱きしめる強い腕。
シルエは未だ状況が飲み込めず、唯茫然と目の前のラトを見上げるばかりだ。
「…どうし…て?」
一体何が起こったのか。
確かにあの時ラトの心臓はその機能を停止していた。
自分だって朝の光を浴びたのだから生きているはずがない。
なのに…何故。
「…これは…夢?私はお前と死ぬこともできなかったのか?」
「違うっ夢じゃないっ!!シルエっ、俺達は生きてる!生きてるんだっ!!」
弾かれるように顔を上げたラトが、しっかりと肩を掴みながらシルエの瞳をのぞき込んだ。
その真っ直ぐな瞳は、あの残酷な夜に見た虚ろな瞳ではなく、二人で過ごした温かな時間常に向けられていたあの瞳だった。
痛いくらいに掴まれた肩からは、確かに彼の温もりを感じる。
次の瞬間、シルエの瞳が揺れたかと思うと、一気に涙が溢れ出しぱたぱたと音を立てて零れ落ちた。
「…ラ、ト…ラト!ラトぉっ!!!」
溢れだした涙は、悲しみの涙ではない。
痛む胸も、自分たちの運命を嘆くものではなかった。
そのまま掻き抱くようにラトの背に腕を回し、温かな胸に顔を埋める。
途端、耳に届いたのは、彼の命を表すような力強い鼓動の響き。
ラトもまた、腕の中の確かな存在を力一杯抱きしめた。
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