歴史エッセイ集「みちのく福袋」
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公開開始日:2011/02/26
最終更新日:2011/02/26 16:33

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歴史エッセイ集「みちのく福袋」 第1章 第1章・古樹
<�目次>

○古樹

・宮城野
・桜
・松

○国見八景

・第一景/大崎八幡神社
・第2景/南山閣
・第3景/龍雲寺
・第4景/北山五山
・第5景/輪王寺
・第6景/荘厳寺
・第7景/大願寺横丁
・第8景/芹沢美術館

○相馬黒光(新宿中村屋
 創始者)

・相馬黒光
・カリーライス
・中村屋サロン

○みちのく福袋

・ジパング伝説
・小説と史実の間
・八甲田山
・ユネスコ外伝
・水の味
・北畠顕家
・北畠顕信
・青葉城
・多賀城
・校歌


○o。..。o○o。..。o○o。

○宮城野

 仙台に生まれ育った私にとって、
歴史的東北地方と言って真っ先に
思い浮かぶ言葉は「蝦夷(えぞ)」
である。京のみやこびと都人が、
野蛮人の住む遠い辺境の未開地と
イメージし、蔑視しているので
あろうと思っていた。

 ところが平安朝の貴族たちは、
陸奥国にロマンチックな憧れを
抱いていたらしい。今から
1260年程前、東大寺大仏を
黄金で飾った砂金は、陸前
(宮城県)で発見された。以来
陸奥国は、黄金(くがね)花咲く
国となった。
 また、古今和歌集をはじめと
する多くの歌に、白河の関
(福島県白河市)や宮城野の萩が
詠まれている。その詩的感情は、
たとえば私たちが井上靖の西域
小説を読んで、遠い異界の時空を
夢想する気分と似ているのかも
しれない。

 東大寺の大仏建立と時を
同じくして、聖武天皇は全国
に国分寺・国分尼寺の建立を
命じた。陸奥国分寺は、現在
の仙台市若林区木ノ下の地に
建てられた。「奥の細道」の
旅でここを訪れた松尾芭蕉は、
「日影ももらぬ松の林に入りて、
ここを木ノ下といふとぞ」と
記している。一面の赤松林
だったのだろう。

 この陸奥国分寺の北に広がる
野が、平安朝の頃から萩の名所
として知られていた「宮城野」
である。紅紫色の萩の花が、
秋風吹く宮城野に咲き乱れる
という、可憐でありながら
寂しげなイメージが、平安朝
貴族の詩情をかきたてたの
だろうか。


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