タイはトロリと甘いマンゴーの味第2話:バツイチ黒豹は飢えていた(無修正版)
第1章 黒豹との出会い
黒ヒョウというのは、タイ人にありがちの色が浅黒くて、なおかつ引き締まった体で、すきあらば噛み付いてくるという、油断できない女のことだ。
その黒ヒョウと出会ったのは、バンコクのナナ・プラザというゴーゴーバー集合ビルの、とある店だった。
そこはウナギの寝床のように奥に細長い店で、中央に細長いステージがあり、客は両側の壁にへばりつくようにして踊りを見物するという作りだった。
小さい店なので踊り子の数も少なく、5人ずつ2組で踊っていたから、総数10人程度だったのだろう。
その中で、ひときわ目を引く踊りをする子がいた。
若くもないし、色も黒いし、美人でもないのだが、均整のとれたいい体が、ハイヒールサンダルでさらに引き締まり、その姿で気合の入った踊りをする子だった。
興が乗ってくると頭をブンブン振り回して、長い髪の毛が逆立って、ライオンのタテガミのようになるのだった。
あんないい踊りをするのに、自分からは何もアピールしてこない、控えめな子だった。
しばらく、その子の踊り目当てでその店に毎日のように通った。
その子自体に興味があるのではなく、純粋にその子の踊りを見たいだけなので、呼んで話をしたり、ドリンクをおごったりすることはなかった。
気合の入った踊りを見て、満足したら帰るというだけだ。
ところがある日行ったら、別人のように気が抜けている。
今日はどうしたんだろうと注目していたら、動きが次第に緩慢になり、最後はこっちに引き締まった臀部を向けて、ポールに寄りかかり、ギリシャ彫刻のように固まってしまった。
具合でも悪いのかと、その子を呼んで、横に座らせて聞いてみた。
オンというその子は
「疲れた。毎日踊ってると疲れるし」
「いつもはすごい踊りなのに、今日は全然ダメじゃないか」
「フフッ」
笑いにも力が入ってないので、相当疲れているようだ。
「酒でも飲んだら疲れが取れるかな」
一杯おごってやった。
それを機会に、来る度におごってやる仲になった。
その頃は、色は黒いし鼻ペシャだし、いい体はしていても、とても食指は動かなかったのだが・・・。
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