羊

完結
発行者:シュール
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ジャンル:その他

公開開始日:2010/09/05
最終更新日:---

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第1章 俺様・・・ハローワークにて

 十四年勤めた会社を辞めた。
 仕えた上司がみんなバカだった。五年前に親会社に吸収され訳の分からない人間がどんどんと上のポストに着き始めた。お荷物の事業部だったため次々と事業の規模が縮小され大阪の営業所が万博で元気づく名古屋営業所の傘下に下り閉鎖された。両親が偶然にも一年置きに同じ左脚の付け根にセラミックを埋める手術をして色違いの杖を突き始めた。等々いろいろあったが結局は、この俺様がこんなとこで終わるわけがない、が一番大きな理由だった。
 会議室に人が集まり始めた。
 辞めた会社に入社した時、総務課に配属され、社会保険を担当していた関係生まれて初めて行った職安と比較すると、建屋といい職員に女性が目立つことといいかなりイメージが変わり、名称もハローワークに変わったが、来ている人間は、十四年前と全く変わっておらず、輪郭になにか塵みたいなものが付着していた。
 説明会が始まった。
 首からIDカードをぶら下げた顔に締まりのない職員が、ビデオを交えいろいろと説明をする。
「自己都合で辞められた方の次の認定日は三カ月後の六月・・・」
 会社が倒産したり、リストラで解雇された人達はすぐに雇用保険が貰えるのに対し、自己都合、要は自分から自らの意志で会社を辞めたものは三カ月間受給が遅れるらしい。
 会社の倒産はしょうがないにしても、仕事ができなくて肩を叩かれた人間がどうして優遇されるのだろうか?。この国の法律はできない人間にどうして手を差し伸べるのだろうか?彼らは退職金にしても上増しをもらっているはずだ。こっちは、上増しなどもらっておらず、バブル全盛期に国立のK大学を卒業して、日本の会社ならどこへでも入れたのに、モノづくりの大切さを認識しているからこそメーカーに就職し、十四年間勤め、そして、いろいろと考えた末、自らの志を持って会社を辞めた、にもかかわらず待遇に差があるのは一体どういうことだ。
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