Johann,-ヨハン-
第1章 遭遇
青白い光が閃いたと思った瞬間、警備兵が3人、呻き声も上げずに倒れた。周囲は既に闇に覆われ、月光が警備兵の首から溢れる血を鈍く照らす。
僕―アンリ・ノルベール―は、王立学術院に通う学術生だ。今日中にレポートを仕上げなければならず、寮に戻るのが随分と遅くなってしまった。でも、まさか、そのせいで野盗に出くわしてしまうなんて―。
とっさに身を隠しながら、警備兵の倒れた城門に視線をやる。
――でも、どうして野盗がこんな所に? 監視塔の警備を潜り、気付かれずに街を抜けてここまで? 警備用のクリーチャーだっているのに。
野盗―濃紺のマントとターバン。紅く光る眼―は血に濡れたダガーを仕舞うと、城門を通り過ぎ、闇の中へ消えた。
1