【moral】 /BL
第1章 さようなら。
水面の向こう側で月がゆらゆらと白く揺れていた。手を伸ばせば届きそうなのに、到底届くはずもなく僕の意識は徐々に暗闇の中に引き摺り込まれて行った。最期に僕の瞳に揺れた月に優しい笑顔が映った。
『ごめんなさい』
たった一言、僕が書き残した言葉。貴方を愛してしまってごめんなさい。貴女を裏切ってしまってごめんなさい。お前に抱かれるべきじゃなかったのに、ごめんなさい。そして生まれて来てしまって、ごめんなさい……
初恋は16の時だった。そしてそれは、姉の婚約者だった。
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