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慰安婦問題の日韓合意は破綻する - 倫理的主体を欠いた歴史外交は成就しない
2015-12-30 17:11:00
テーマ: 政治・経済
慰安婦問題をめぐる日韓合意が12/28に発表された。それによると、今回の合意は「最終的かつ不可逆的解決」と確認されていて、以後、この問題をめぐって「国際社会で互いに非難・批判することは控える」という方針が表明されている。蒸し返さないということだ。政府間の合意であり、国際社会も高い関心を寄せている中でのコミットであるため、軽い合意ではないのだが、私はこの合意は守られないだろうと予想する。すぐに破綻して反故という流れに向かうのではないか。最初に報道を聞いたとき、そう悲観的な見方を持った。内田樹など左翼リベラルの論者は、この合意を一歩前進と前向きに評価し、歓迎のコメントを発しているけれど、私はそのような感想を持つことはできないし、この政治に積極的な意味づけを与えることはできない。なぜなら、この合意は、米国への媚売りが目的の粗悪なハリボテ細工の外交で、すぐに合意の中身が崩れるからで、合意が破綻した後に現在よりも強烈な日韓の不信を招くことが見え見えの政治だからである。韓国の動向を見ると、今回の合意に対して最大野党が強く反対して政府を非難している。屈辱であり野合であると言い、弱腰外交だと糾弾している。日本の野党の肯定的な姿勢とは様子が違う。元慰安婦たちも、日本側に法的責任を認めさせることなく、自分たち被害者に相談もなく、唐突に、政府が「最終的解決」を日本側に約束したことを激怒している。

『母と暮せば』と次の戦争の絶望 - 死んでゆく意味すら信じられぬまま
2015-12-24 18:32:00
テーマ: 政治・経済
山田洋次監督の『母と暮せば』を見てきました。井上ひさしが戯曲を書いて黒木和雄が映画化した『父と暮せば』の登場人物を逆の配置にし、長崎の原爆投下で母の方が生き残り、息子の方が死に、3回忌の夜に幽霊になって現れるという物語です。井上ひさしは、広島、長崎、沖縄と三部作を構想していたらしく、その長崎編を山田洋次が遺志を継いだ形で映画化した作品だそうです。山田洋次の新作で、吉永小百合が主演で、戦争をテーマにしたものですから、何はさておき見なきゃということで映画館に足を運びました。師走のシネコンは『STAR WARS』の客でごった返していました。とても悲しいお話で、救いのない印象を受けました。正直に感想を言えば、比較して、黒木和雄の『父と暮せば』の方がずっといい。『父と暮せば』の方は、ハッピーエンドという表現は適当ではないですが、次の生への希望というか、命の絆というものを最後に感じることができました。映画の中にすっかり没入して、感情移入して、ラストの宮沢りえの「おとったん、ありがとありました」の台詞を聞いたとき、ああよかった、素晴らしい作品だったと満足と感動を覚えたものでした。今回は、ラストの部分に暗い違和感と絶望感が残りました。作品全体の評価でも、『父と暮せば』が90点なら『母と暮せば』は60点です。宮沢りえと二宮和也の演技力の差ということになります。『父』の宮沢りえは絶品だった。

今年1年を振り返って - 安保法成立の無念とSEALDs運動のあざとさ
2015-12-23 14:46:00
テーマ: 政治・経済
今年1年を振り返ったとき、やはり言わなくてはいけないことは、安保法が制定されてしまったことだ。9月19日未明に成立し、9月30日に公布された。来年3月末までに施行となり、来年度の自衛隊は新しい安保法制の下での運用となる。あらためて言うまでもなく、この新法制は憲法9条の改定を先取りしたもので、違憲立法であり、本来なら9条を改定した先に生まれ変わるべき自衛隊が、そのまま出現して活動してしまうことになる。中身としては、安倍晋三がDCで約束してきたとおり、米軍の戦争に自衛隊を差し出して使ってもらうということであり、来年からの戦争に自衛隊を駆り出すということだ。具体的にどんな戦争かということは、1年前に米国の安全保障と外交のシンクタンクの幹部が報ステで証言を残していて参考になる。私は、尖閣危機が起きて安倍晋三が政権を取った2012年から、ずっと、2016年6月頃に中国と軍事衝突を起こすという予想を言い続け、その根拠を論じてきたが、半年後に日程が迫った今でも、特にそれを修正する必要性を覚えない。不思議なのは、巷の空間に戦争が始まるという危機感がないことだ。あれほど安保法の危険性を報道し、法案阻止の論陣を張った報ステやNEWS23が、最近は戦争に恐怖する気配が全くなくなった。戦争法と呼 んだ安保法が成立した後、まるで平和な時代を取り戻したかのようだ。

自由と民主主義を考えるための「世に倦む」選書15冊 - 知識人になるために
2015-12-20 23:42:00
テーマ: 政治・経済
「世に倦む」選書15冊の続きを。⑨の日高六郎編『1960年 5月19日』。1960年10月に出版の岩波新書。60年安保闘争とは何だったかを知る最良の入門書。1960年5月19日の強行採決、6月10日の羽田ハガチー事件、6月15日のデモと樺美智子の死、6月17日の七社共同宣言、6月18日の自然承認、6月23日の岸信介の退陣表明と、怒濤の1か月間が綴られている。戦後民主主義が運動のレベルで爆発した沸点の日本人のドラマ。この政治の激動を通じて、日本国憲法の理念は体制として確立し、いわゆる平和と繁栄の戦後日本ができた。ダワーが言うところの、憲法の理想を日本人が地上に引き降ろした市民革命の瞬間である。SEALDs選書にこの一冊が入ってないことも、どうにも不自然で不可解でならない。運動としての民主主義の意義にコミットするならば、60年安保の歴史を基礎知識として持とうとするのは当然のことだろう。除外された理由は何なのか。われわれは、日本国憲法について、東京裁判について、60年安保について知らなくてはいけない。基本を押さえないといけない。これらは学校教育では教わらないことが多く、正確な知識を持った教師が少ない。この書で歴史の概要を掴んだ上で、丸山真男集第8巻に所収されている「選択のとき」と「復初の説」の2論文を読み、世織書房『同時代人丸山真男について』での日高六郎の回顧を参考にして欲しい。

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