特集『わたしたちと原発』と題された「朝日ジャーナル」(週刊朝日の臨時増刊)が
発売されている。ご記憶の方も多いと思うが、昨年6月に出た『原発と人間』の特集号は脱力させられる
内容で、巻頭言で編集長の河畠大四が、「人類は、原子力という割安でエコな『夢のエネルギー』を手に入れた」と書き、編集後記で「原発は『賛成』『反対』の二元論だけで語れません」と総括されたものだった。この「週刊朝日の臨時増刊」を担当している編集スタッフは、原発について賛成でも反対でもない立場を表明していて、原発について判断する知識を持ってない者たちが売っていたのである。この当時、確かにマスコミは反対論と賛成論の二つを等価に並べて原発報道をやっていて、御用学者たちが堂々とテレビに顔を出していたし、報ステの「私はこう思う」の特集シリーズでも双方の論者が交互に登板する企画になっていた。それを見ていた「週刊朝日の臨時増刊」の若い編集メンバーが、マスコミの原発報道の論調や態度を「市場」の一般的傾向と捉え、「賛成でも反対でもない」立場で編集していたのである。今回の号は、9か月前と較べれば正常な内容になったが、掲載されている開沼博の愚劣な記事などは、なお「賛成でも反対でもない」編集部の意向を世間に訴えている。一言で言えば、脱構築のイデオロギーに染まった偏狭で未熟な価値相対主義。