前回の続きだが、下からの自生的な内需拡大と景気回復を担う人格の問題、そして、再び日本の製造業を再生させることができるかという問題である。その方向を信じながら、一抹の不安を感じるのは、『男はつらいよ』の世界とはすっかり変わった感がある今の日本人の内面の問題である。テレビ報道の街頭インタビューに登場する面々、高齢者にもっと負担させろとか、消費税増税はいい政策だなどと平気で言いのけている若い世代の顔を見ながら、果たしてこの知性の者たちが、25年前のような世界をリードする優秀な日本の製造業の担い手になれるのか、あの大田区の町工場(下請零細企業)の老経営者の往年のような経済主体になれるのか、その点を訝しく思うのである。たゆまぬ研鑽と努力で技術力を高め、仲間に気を配って集団の士気を高め、改善と創意と精度を競い合い、全員で力を合わせて遠大な目標を達成するような、70年代の日本経済の労使で一般的だった人間類型。それが失われている。これほどわがままで独りよがりで、謙虚さや我慢強さや他者への思いやりを欠き、スマホをいじっているだけの者に、果たして世界一の製造業を担う資質があるのかと、そんな気分になるのである。韓国やタイの人間の方が、日本人より心が素直で、真面目で勉強熱心で、職業人としての平均的能力が高いのではないかと。