金融緩和で余剰になったマネーが金融市場に流入し、株価だけでなく原油や農産物の価格を押し上げている。輸入する原材料や穀物の高騰と食料品への価格転嫁がテレビのニュースで囁かれ始め、状況は3年前の世界食糧危機の前夜に似た様相を呈している。フィリピンやハイチなど、当時塗炭の苦しみを味わった食糧輸入弱者の国の人々は、さぞかし不安な新年を迎えていることだろう。また、この情勢の進行はTPPの問題に影響を与えるはずだ。3年前、小沢民主党の掲げる小規模農家重視の戸別補償政策が支持を受けたのは、食料自給率の向上に国民の関心が強く向いたからだった。デフレ対策や国債金利の問題も気になる。そこで、国際経済の最新動向のアウトラインを掴もうと思い立って、近くの書店で本を物色したが、購入して読んでみようと思える一冊がなかった。例年、年末になると、新年の経済動向を展望する新刊書がエコノミストやシンクタンクから出版され、それは季節の風物詩のような景色であり、サラリーマンたちが正月休みに読んで仕事上の糧秣にしていたものだ。その市場環境の基本は今も続いているけれど、中身が大きく変わってしまっている。「風物詩」の内実は様変わりしている。周辺的なところで一例を挙げると、「イミダス」とか「知恵蔵」の出版が消えている。これらは年末の「風物詩」の中の重要な役者だった。