ドグマ(教条)の語の意味について、平凡社の
哲学事典は次のように説明している。「宗教の信仰内容がカトリック教会の会議によって公認され、教皇の宣言によって権威づけられて、理性の批判を許さぬ教理となったもの」「学問でも常識でも支配的イデオロギーを権威として無批判的、盲目的に信仰される命題」「一般に根拠に基づいて論証されたのではない主張」(P.1020)。先週からマスコミで喧しく議論されている「海兵隊の抑止力」の言説は、まさにこの定義に適合する性格の主張だと言える。「沖縄に置いている米海兵隊の抑止力のおかげで日本の平和が守られている」と、論者がテレビの番組で言うとき、その中身は全く検証されない。その命題に対して、異議や批判がスタジオの中から上がり、討論で真偽を問い争う場面には一切ならないのである。誰かが「海兵隊の抑止力」論を言えば、キャスターを含めた番組出演者はそれを素通りさせ、暗黙のまま肯定する論調で番組が進行する。誰も異を唱えない。否定する人間がいない。
放送法に則って「政治的公平」が担保されているはずのテレビ報道で、「海兵隊の抑止力」論は絶対的な真理として前提されていて、それを疑うこと自体が許されていないのである。哲学事典の定義に即して、かかる現実を直視すれば、テレビ報道の出演者全員が、支配的イデオロギーたる日米同盟真理教の信奉者で固められていて、彼らが盲目的に信仰している「海兵隊の抑止力」論のプロパガンダを国民にシャワーしているという事実認識になる。