『龍馬伝』の第六話は吉田松陰が登場、小舟で下田沖のペリーの艦に乗り込もうと漕ぎ出す場面が出た。無論、龍馬と桂が下田の松蔭と会偶したなどという事実はなく、全てはドラマの創作だが、作品がどのような脚本で場面を作って見せるかは大いに楽しみだった。このドラマは場面の一つ一つで実に説得的な絵と言葉を見せて、視聴者の私を堪能させてくれるからである。期待が裏切られず、常に期待以上のものが返され、大いなる満足と感動を得られる。脚本と演出が素晴らしい。カメラも素晴らしい。毎回、釘づけになって見入っている。今回、作者は松蔭をどう描くだろうかと注目したが、仕上がりは実に素晴らしかった。よく勉強している。外してない。正確な松蔭理解の基礎がある。短い時間の出番だったが、松蔭が桂と龍馬に発した言葉は、松蔭の人物像を見事に捉えていて、視聴者に強い印象を残すことに成功した。龍馬と松蔭の二人の会話のやりとりが第六話のクライマックスである。見ながら、「これでいい」と思った。あれでいい。あれが松蔭だ。激情型の人物であり、決意と行動で自己を示す預言者であり、発する言葉は常に過激な詩人であり、情熱的な実践家としての姿が相対した者にとって永遠の教育者として心に残るのである。革命家。革命の第一世代。「黒船に乗ってアメリカに行くのは僕のやるべき事であって、君のではない。君は何者だ、何のためにこの天の下にいる。君のやるべきことは何だ、考えるな、己の心を見よ。そこにはもう答えがあるはずだ」。