12/22の朝日新聞で、政治学者が政権交代から100日経って内閣支持率が急落した鳩山政権について論じている。山口二郎は、「民主党が実現したい目標やコミットすべき価値観を明確に打ち出せないなら、単なるカオスを生むだけ」と現状を批判、新政権がめざす政策の基軸を出していないと苦言で呈している。後房雄は、「政権交代の意義は、政策の中身ではなく政権交代可能な枠組みを作ったこと」だと従来の持論を展開。小選挙区制の現行制度を礼賛し、政党間の政策の違いなど問題ではないと言っている。後房雄の見立てでは、政権交代を繰り返せば二大政党の政策の違いも明確になるらしい。噴飯で笑止と言わざるを得ないが、記事の中で私が注目したのは、保守論客である西部邁の議論だった。曰く、「変化それ自体がよきものであるという根拠は何もない。民主主義にもし唯一可能性があるとしたら、少数意見をいかに尊重するかにかかっている」。正論だ。西部邁によると、談合政治と言われながらも少数意見を調整によって取り込んだ嘗ての自民党と社会党の55年体制の方に、現行の二大政党制よりも積極的な意義が認められると言う。全く同感する。この記事は文化面(35面)に載っていて、政治部の記者の手によるものではない。西部邁の発言を拾ってなければ、いつもの朝日らしい些末な記事だと無視するところだったが、西部邁の「二大政党による政権交代」批判の言に大いに納得させられた。