大河ドラマ『
龍馬伝』の第1回は、予想以上に面白い内容に仕上がっていた。年末からの前宣伝が洪水のように夥しかったため、多くの人が見ただろうと思っていたら、視聴率は意外に
低い結果となった。『坂の上の雲』と『紅白歌合戦』と『龍馬伝』、この三つの番組の前宣伝は怒濤のように凄まじかったが、私はそれを鬱陶しいとも感じることなく、チャンネルを民放に替えないままテレビの前に座っていた。最近のNHKの視聴率対策は実に戦略的で、民放など足下も及ばないほど視聴率(シェア=市場占有率)に拘った編成に徹している。大型番組を告知案内するプレ企画がそれなりに視聴率を取れる事実を知っていて、同時に、そうやって期待と関心を高めて本番の放送の視聴率を稼ごうとする。昨夜(1/3)の数字はNHKにとっては不本意なものだっただろう。視聴率は低く止まったが、中身は素晴らしかった。初回放送のテーマは土佐における上士と郷士の対立で、75分間の中でこの問題が執拗なほど十分に描かれていた。視聴者は前宣伝から受けた印象とは全く違う衝撃と感動を第1回で感じたに違いない。明るく溌剌とした龍馬の人格が育まれる家庭や周囲の環境が描かれ、青春ドラマの伸びやかなイントロになるだろうと思っていたら、そこに映し出されたのは土佐の階級社会の過酷で壮絶な現実だった。第1回の映像の断片は前宣伝で何度も使われていたが、誰もこのような深刻な中身だとは想像できなかっただろう。NHKの見事な演出と言える。