先週末、北九州市で39歳の男性が生活保護を受けられず孤独死した事件が報じられた。私はこの報道が信じられず、目を疑う思いだった。なぜなら、例の「おにぎりが食べたい」と言い残して死んだ男性の事件が起きたのが2007年で、市の対応を弁護士が告発する動きにまで発展し、NHKの7時のニュースで報道され、日本の貧困を象徴する大きな問題になっていたからである。この事件が国民の関心を呼び、NHKの「ワーキングプア」報道があり、さらに昨年からの政府の大型補正予算があって、悪名高い福祉事務所による生活保護申請拒絶の「水際作戦」は、一時期に比べて状況が緩和されていたのではないかと楽観的に想像していた。しかし実際はそうではなかった。行政は何も改善されていなかった。どうして同じ問題が再発するのだろうか。絶望的な気分になる。新聞報道を見ても、市側に特に反省の様子は伺えず、また、記事は市の対応を厳しく批判してもいない。今回、マスコミはこの問題を大きく取り扱わなかった。人の命の問題は放ったらかして、二羽のハトがどうのこうのと瑣末な政界茶番報道に興じ、電波の資源を無駄使いしている。