6/8は
秋葉原事件から1年となる日だったが、その報道は実に淡泊で、事件の意味を深く問い返すジャーナリズムはどこからも提供されなかった。不思議に思う。マスコミ報道は、被害者や遺族が事件で受けた心や体の傷の痛みに苦しんでいる姿を紹介する映像や記事が主で、ついでに秋葉原の町の変化に軽く触れた程度だった。取材する記者が1年前の事件に対して強い問題意識を持っていないことが伝わってくる。不満に思うのは、加害者の動機や事件の背景について注意を向ける報道が何もなかったことで、報道機関は、「動機の解明が待たれます」とうわべで言いつつ、決して自ら探究しようとしない。1年前に事件が起きたとき、報道は加害者の派遣労働に注目して、関東自動車と日研総業がどのような働かせ方や解雇をしたのかを焦点にしていた。それは加害者を取り調べた警察自身が、まさにその問題を動機の核心として捉え、報道陣に情報提供していたからである。NHKは12日後に
ドキュメンタリー番組を制作して放送、その内容は「
ワーキングプア」を継承する基調のものだった。新自由主義の労働形態が告発されていた。