昨夜(11/7)、NHKが赤字国債の特集番組を放送していたが、それを見ながら、金子勝が10年ほど前に繰り返していた発言が頭に浮かんだ。「このままだと戦争か革命でしか問題を解決できない」。当時は、その主張をあまり積極的には聞けなかった。経済学者の議論として、あまりに捨て鉢で思考停止的な態度だと思われたからである。経済学者ならば、どのような問題についても冷静な現実分析の上で具体的な展望を引き出し、政策的解決の経路を提言するもので、終末論的な預言者の警鐘を打ち鳴らすのは、経済学者として無責任で失格だと思われた。また、借金は返せるとする私なりの合理的な
積算根拠と政策提案もあった。その構想については現在でも実効性を諦めてないが、それとは別に、金子勝のカタストロフィの予言が次第に現実味を帯び、説得力が深まっている現在の社会的心理状況を正直に認めざるを得ない。少子高齢化や国際競争力の低下の中で、多くの日本人が、借金は働いて合理的に返済できるのではなく、破滅によって暴力的に帳消しになるのではないかと考え始めている。もっと踏み込んで言えば、カタストロフィを通じたカタルシスへの病的誘惑と言うか、諦念的待望の心理が堆積していて、すぐにも「希望は戦争」的な可燃性に気化しそうな気配があり、それが現在の異常な反中ファナティシズムの政治現象の底流にあるように窺われる。