『龍馬伝』の第三話では、
広末涼子が一弦琴を弾く場面があった。この番組は小道具の演出が素晴らしい。第二話では日本史の教科書で習った千歯こきが登場して印象を残したが、第三話では土佐一弦琴が出た。宮尾登美子が小説を書いていて、何年か前にNHKの
連続ドラマにもなっていた記憶がある。それと、今回の放送で特に感銘を受けたのは、武市道場での乱取り稽古のシーンで、数秒間だったが、迫力のあるリアルな映像に驚かされた。以蔵の剣の型について本格的な考証が入っているようにも感じられたし、それ以上に、あの強烈な乱取りは本当に剣道をやっている(有段者のレベルの)人間の実演そのもので、とても未経験の俳優が短時間の演技指導で見せられる代物ではない。少しでも剣道を経験した者であれば、それはすぐにわかる。作品に賭ける監督と演出家の真剣な意気込みが伝わってくる。細部が充実している。手抜きしてないどころか、細部を見せて視聴者を感動させている。テレビの時代劇としては、ディーテイルが目を見張るほど完成度が高い。第二話のラストでの児玉清と福山雅治が歩く高知城下の背景も見入らされたが、スタッフは場面の一つ一つに(説明はなくとも)具体的な実在を想定し、その歴史的情景の再現を意識している。映像作りが
絵コンテ的であり、場面の隅々まで凝っていて、黒澤明の製作手法を思わせる。それでいいと思う。日本の時代劇は黒澤明的でなくてはいけない。