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僕の読書論
2015/10/17 07:21:00
テーマ: 読書・文芸
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1510/13/news048.html#l_sk_manga.jpg






《日本財団は、子供たちの学習意欲を高めたり、社会問題への興味の入り口になったりする娯楽漫画100作品を選び「これも学習マンガだ!~世界発見プロジェクト~」として発表した。大和和紀さんが源氏物語をベースに描いた「あさきゆめみし」や、宮崎駿さんの「風の谷のナウシカ」、手塚治虫さんの「アドルフに告ぐ」など、100作品。一般漫画を“学び”の視点から選定する初の試みで、今後は国内外の図書イベントで紹介するほか、学校図書への普及などを働きかけていく。

選者は、明治大の藤本由香里教授(漫画研究)や菊池健・トキワ荘プロジェクトディレクターら7人。漫画家の里中満智子さんと慶応大大学院の中村伊知哉教授(メディア政策)が監修した。

史実を重視し、教育現場での補助教材にもなる学習漫画とは一線を画し、娯楽性、共感性を重視した。会見した里中さんは「日本の漫画のジャンルは広く、読むことで刺激を受けるという意味では、全てが学習漫画に当てはまるという意見もあった」と選考の難しさを吐露。「読むことで人生が豊かになる作品を選んだ。多くの議論が起こることを期待している」などと話した。》





里中さんは、今までもマンガの魅力を海外に積極的に発信するだけでなく、私たち日本人にも数々の名作の魅力を伝えてきた作家の一人です。今回も監修として携わりこのような発表をされる意味は、確かにあるでしょう。


それでも、私はこの記事を批判したい。








マンガ作品の魅力を、ひろく内外に発信していくことはとても大切なことです。表現形態として、量的にも質的にもマンガが持つ可能性は特筆すべきで、このようなメディアが、日本でここまで隆盛を極めたというのは、もっと真面目に語られていい。



だけど、それを、なんで「学習に役立つ」という理由で広める必要があるのですか?


大和和紀の「あさきゆめみし」は、私もブログで紹介したことがありますし、以前読書会の課題図書にしたこともあります。だけど、この名作を、何が哀しくて子供のたちの学習意欲が高まる作品として紹介しないといけないのか。源氏物語をベースにしている→古典の授業の学習に役立つ→これも学習マンガだ!ということなのでしょうか?この記事だけ読むとそうとしか考えられませんよね。


「あさきゆめみし」の素晴らしさをここに書けば、それだけで紙面が埋まってしまいます(ま、ホントはブログだから埋まらんけど)。この作品は、平安時代の女性が、現代とは価値観もパラダイムも異なる世界で描いた物語を忠実に再現しつつ、「恋」という情欲の本質が、何千年の月日を隔てても、本質面で驚くほど変わっていない真実を現代の私たちに感動をもって訴えてくるところにすばらしさがあるわけであって、学習に役立つかどうかなどというのはどうでもいい話である。



だいたい「源氏物語」なんて、イケメンで育ちがやたらいい男が、女とヤッてヤッてヤリまくるという、句読点も含めて35字以内でまとめると、ただそれだけの話なわけです。「あさきゆめみし」にも、濃厚(すぎる)エロスが満ち、もちろんそれがこの作品の大きな魅力に決まっているわけですが、学習マンガだなんて言われたら、その興奮も萎えるというものではないでしょうか。



里中さんも、娯楽性や共感性を重視し、読むことで人生が豊かになる作品を選んだとおっしゃっているのに、記事全体を読むとなんだか「ここにあるマンガはリッパなマンガだからお前らも読め」みたいな空気が漂い、げんなりします。



「アドルフに告ぐ」は、手塚治虫の代表作(の一つ)であるというのはまあいいとして、「100選」に選ぶならもっといい作品がいくらでもあるでしょう。これも、ナチスドイツの恐ろしさと、ヒットラーの人間としての内面の葛藤を描いた”リッパな作品”だから選ばれたのでしょうか?




そもそも、マンガに限らず、あらゆる読書は「おもしろい」か「おもしろくない」かに分けられるのであって、「役に立つ」とか「ためになるから」という理由でやってはいけません。結果として、この一冊に出会ったのは役に立ったということはあるでしょうが、それはその本が持つ魅力の、ほんの一面ですし、本末転倒して「学習の役に立つ」「ためになる」本を探そうとか薦めようなどというのは、痩せた考えです。













たとえば、今私は島泰三という人の書いた「親指はなぜ太いのか」という本を読んでいます。一本だけ離れて生えている、太くて短い親指と、強くて堅い歯を持つ人類。他の霊長類と比べても特異な人類の手と口から、どうして人類が立ち上がって歩き、何を食べてきたかの謎にせまる本です。


しかし、私はこの作品が進化論の学習の役に立つから(?)とか、そんな理由で読んでいるわけではありません。友達から「おもしろいよ」と勧められる、実際読んでみたら「おもしろい」のでページが進むだけです。それでいいではありませんか。読書というのは、すべからくそうすべきだと思うのです。

学習に役立ちそうとか、そういう理由を引っ張ってくるのは、私は矮小な考えだと思います。

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